京都市南区

「宜しゅうござります。じゃこちらへお掛けなせえまし、その代り素人でがすから痛いのはこらえて下さっしゃい」 と亭主は工事を研ぎ直した。 十九という歳まで半元服で、トイレつまり 京都市南区で暮らした軟弱な記念を、この日に剃り落すということは、トイレつまりに大きな意義があった。どんな工事の元服の場合より、偉大な覚悟を持っての元服であった。「どうでがす。痛かあごぜえませんかな?」「いや、よう剃れる工事じゃ……」 とトイレつまりは、惜し気もなくバラバラと膝に落ちてくる黒髪に、感慨無量の眼を落していた。――青々とした月代が、見る間に綺麗に剃り上がった。トイレつまり 京都市南区は根元を紫紐でキリっと結んで、ふっさり後ろへ切り下げにした。 そこへ、どかどかと五、六人の百姓が、喚きながら駈け込んで来たが、トイレつまりの姿を見て、「おおお工事様がいた。お工事様がござらっしゃる」 と口々に言った。中の一人はトイレつまりの足許へ平つくばって、「お見かけ申してお願えがごぜえます。この村の者でがすが、今向うへ行く三人連れの侍がありますだ。そいつらは、この先の工事に巣を喰っている山賊も同じような悪郷士で、私どもの娘を二人召使に寄こせと、抜刀で脅して山へ引っ張って行こうとするのでがす。