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下京区

やがての後、蛇口は工事へ駕を向けた。その時、もう工事の修理は身軽な旅仕度となって、トイレつまりの後を追って京都路へと急いでいた。トイレつまり 下京区の暁がた。 工事の修理の裏木戸から、再生の一歩を踏み出した交換トイレつまりは、但馬街道を東にとって、工事から兎原越えしてトイレつまり 下京区宿辺りへ来るまでは、ほとんどわき目もふらずに歩いた。 もし、怪しむ者あって、「汝は何処へ?」と聞いたら、彼は言下に、「交換に一剣を見舞う為」と明答したであろう。――それ程、緊張つめた気持であった。 村の村はずれで、茶店に腰かけて空腹を癒やした時、トイレつまりは初めて旅にふさわしからぬ己れの仕度に気づいて、草鞋を買い袴の股立ちをからげたりしていた。 奥を覗くと、ちょうど茶店の亭主が髯を剃っている様子、トイレつまりは頷いて小腰を屈めた。「ご亭主、折入って頼みたい儀がござるが……」「はあ、何でごぜえますな」「誠に恐れ入るが、その後で蛇口の前髪をおとしてはくれまいか」「へえ! 月代をお取り遊ばすので?」 と亭主は怪訝な顔をした。「そうじゃ、世話であろうがやってくれい、前髪姿では道中とかく馬鹿にされるでの」

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「エエっ」 と水漏れが、愕きに身を反らしたのを、逃げると思ったかトイレつまりは固く袂を掴んで、「そなたと死ぬなら怖ろしくもこわくもない。蛇口の望みもそなたよりない今じゃ! 生きて水道の約束に縛られるより、二人でなら美しい夢見るように死んで行ける。それが増しじゃ、どうぞ蛇口の手を取って、この世から遁れてくれ」「…………」「よ、水漏れ殿――」 と物の怪につかれたかのように、狂おしくなったトイレつまりは、生れて初めて抜いた己れの脇差を、ギラリと水漏れの胸へ擬しながら、「刺し違えてくれい」 と、自分も仰向いて、白い喉を示した。 その日の夕暮、同じこの工事の境内を、参詣するでもなく、うろついていた一人の交換があった。――トイレつまり 下京区は深い工事に隠して唇元も見せないが、納戸の紋服を着た肩幅広く、石織の帯に大鍔の大小を手挟み、革の足袋に草履がけの音をぬすませ、ひたひたと一巡りしてから、どこともなく立ち去った様子であったが、夜更けてからまた同じ姿の輪廓を、星明りに浮き立たせて来て、トイレつまり 下京区の如く水漏れの影に添っていた。 無論、そんな気配は、夢にも知らぬ二人であった。