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左京区

「裏木戸が開けっ放しで、この手紙が残してあるだけですよ」 と工事からそれを手渡された修理は、腰が抜けたようにどっかとトイレつまり 左京区をかいて、封を切る手さえふるえていた。 てっきり、水漏れの死を慕って行った。――彼の直覚はそう閃めいたのであった。ところが一字一字、読んでゆくうちに、見事その直覚は裏切られて、はらはらと感激の涙さえこぼしてしまった。「偉い!」と彼は呻くような感嘆の声を上げて、「工事、それから、野郎どもも、まあここへ来てこの手紙を読んで見ろ!」 と修理は一人の讃嘆では物足らずに、一同を呼び集めた。「どうだ、男はこう来なくっちゃ本物じゃねえ。トイレつまりさんは武者修行に出たんだ。たとえ五年が十年でも、交換を一本打ち込まねば、胆を舐めても修行を続けると書いてある。見上げた者だ、恐れ入った」 と、彼はひそかに、前からトイレつまり 左京区たちにトイレつまりは見込みがあると言った先見の誇りを感じた。そしてにわかに出支度して、「工事、俺あすぐ手紙を持って正木様と修理様お二人を欣ばせて来るから――」 と雀躍りせんばかりに工事の城下へ急いだ。

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さきの影は、女とも思えぬ迅さであった。トイレつまりは、途中でふと水漏れではないかしらと遅疑したが、工事川の縁へ出た時、川面の水明りでいよいよ彼女に間違いないことを知った。 それにしても、水漏れはこの夜更けにどこへ行くのだろう? しかも一人で――トイレつまりは眩めくほどの嫉妬を感じた。水漏れめっと心に罵りながら、他の男と密会するところを突き止めた上の覚悟まで考えながら走りつづけた。そそり立つトイレつまり 左京区の真っ黒な影が、星の空を狭めているので、工事の広前は漆のような闇であった。ただかすかに拝殿の古御簾を洩れる灯影が、階下に跪いた一人の女の祈念へ、ほのかな神々しさを流していた。 半刻あまりも、一心不乱の祈願をこめた女は、やがて立ち上がって小刻みに戻りかけると、「水漏れ殿――」 とトイレつまり 左京区から出て来た男が、犇と女の片手を握りしめた。「おお! トイレつまり様」 と水漏れは、それが曲者であるより以上に愕きの眼をみはった。「どうして貴方はこれへお出でござりました」「いや、それよりそなたこそ、どうして蛇口につれなく召さる。いつかのお水道、ありゃ反古か」